のんびり看護師ブログ

看護する上で大切にしていたことを共有できたらと思います。一つの経験談として読んでもらえたら嬉しいです!

循環器①~術後合併症編~

今回は、病棟で働いてなにを学ぶことができたか、について投稿していきます。

学べることがとても多かったので新卒から循環器病棟で働くことができて本当に良かったと思っています!!

 

結論から話すと、

  1. 医療行為、看護ケア
  2. かかわり
  3. 5つの力

この3つを学ぶことができたと私は考えています。

 

 

今回は長くなるので、

①術後合併症編

②学べること編

の2回にわけて投稿します。

 

 

順調に経過が進む患者さんもいらっしゃいますが、実際は高齢者や既往歴を持っている方や術後合併症を併発した患者さんもおられ、経過が長くなる場合があります。

 

まずは術後合併症についておさらいします。心臓または周囲の血管の手術をするとほかの臓器にも影響があることがよくわかります。

 

心臓の解剖図

 

 

左:心臓自体に栄養を送る冠動脈

右:心臓の中を循環する血液の流れ

 

心臓周囲の血管の解剖図

 上行・弓部の大動脈からは腕頭動脈・左総頚動脈・左鎖骨下動脈の三つの血管に枝分かれしています。脳、左手に血液を送っています。そのうち腕頭動脈は右総頚動脈・右鎖骨下動脈に枝分かれしています。脳、右手に血液を送っています。

術後合併症

 (1)一般的な術後合併症

 創部感染・・・胸部20~30㎝の大きな傷があります。既往に高血糖がある患者は創部感染リスクが高いため注意が必要です。

 縦隔炎・・・術後、ドレーンのチューブからの逆行感染、高血糖などが原因です。

 尿路感染・・・尿道カテーテルからの逆行感染、陰部の不衛生による感染が原因です。

 人工弁/人工血管感染・・・歯周病等で歯茎の近くにある血管から菌が侵入すると、人工弁や人工血管に菌が付き、心臓からの循環によって全身に菌が送られ、敗血症をおこし重症になってしまう可能性があります。

 (2)全身麻酔による合併症

 呼吸器の合併症・・・呼吸抑制、酸欠による低酸素状態、肺胞機能の低下など

 人工呼吸器装着による合併症・・・チューブ刺激による痰量増加、痰貯留による気管閉塞リスクや肺炎、無気肺、チューブ挿入による声帯や咽頭部の損傷での嚥下機能低下、誤嚥性肺炎、嗄声咽頭

 消化器の合併症・・・術後腸管麻痺、イレウス、嘔気嘔吐(嚥下機能低下があると誤嚥リスク高まる)

 腎臓泌尿器の合併症・・・血圧変動や術後の浮腫みによる腎機能の低下、尿毒症、尿閉

 その他・・・術中同一体位による痺れや麻痺などの感覚障害、意識障害やせん妄状態

 (3)術式による合併症

 冠動脈大動脈バイパス術

 心タンポナーデ・・・術後の出血量の増加やドレーン閉塞などが原因で起こる可能性があります。

 術後の冠動脈攣縮による不整脈心筋梗塞・・・バイパスで使用することの多い橈骨動脈は特に収縮してしまう可能性があるため不整脈心筋梗塞を起こす可能性があります。

 上行大動脈置換術

 緊急手術が多いです。術前から心タンポナーデを起こしている可能性があり、手術時に急激な血圧上昇や大動脈破裂を生じるリスクがあります。

  脳障害・・・心臓周辺の血管手術をするために心臓を止めて手術を行います。脳への循環を途絶えさせないために体外循環を使用して脳に血流を送り脳保護を行います。脳障害を起こさせない安全限界は30分前後とされています。術中の血圧低下による脳還流障害、空気や血栓などの閉塞による脳梗塞、ヘパリンの使用や出血傾向などによる脳出血など起こす可能性があります。

 弓部大動脈置換術

 脳障害・・・上行大動脈置換術同様、脳へつながる血管分岐しているため手術により脳障害を起こす可能性があります。

 反回神経麻痺・・・反回神経とは声帯や嚥下機能を司っている神経です。ちょうど弓部の部分で反回しているため、術操作の圧迫や元からあった瘤による圧迫などで麻痺が生じる可能性があります。右にも反回神経がありますが、左のほうが長く血管に絡みついているため右よりも左の反回神経麻痺が多いと言われています。

 下行大動脈置換術

 前脊髄動脈閉塞症候群・・・脊髄動脈に血管閉塞が起こると麻痺が生じ、感覚障害や、膀胱直腸障害、対麻痺が生じる可能性があります。術中の血管遮断時間の長さや術中の低血圧による脊髄虚血大動脈からの塞栓症などが原因とされます。

 弁置換術

 不整脈・・・心臓の電気回路の近くを操作するため術後不整脈を起こす可能性があります。ペースメーカーを挿入する場合もあります。

 

※参考

「ICU3年目ナースのノート 監修 道又元裕」

「見てできる臨床ケア図鑑 ICUビジュアルナーシング 監修 道又元裕」

 

まとめ

 心臓や大血管は身体の中心部にあるので、病変が起こり手術をするとさまざまな臓器に影響します。心臓なのに歯が関係していたり、消化器や腎臓泌尿器系にも影響を及ぼしたり、解剖をしっかり理解しているとすべてがつながりますね。解剖の理解や術後の身体の流れを理解していると、実際に看護するときに、「なぜそのケアが必要なのか」がわかっていきます。先を見据えた看護をするためにも知識のインプットはとても大切です。