のんびり看護師ブログ

看護する上で大切にしていたことを共有できたらと思います。一つの経験談として読んでもらえたら嬉しいです!

循環器②~学べること編~

解剖の理解から術後合併症について前回お伝えしました。

今回は具体的に、学んだこと・大切にしてきたことを共有していきます。

 

①医療行為、看護ケア

さまざまな医療機器に触れる機会がありとても勉強になりました。

基本的看護ケア

環境整備、バイタルサイン測定、体位変換、清拭、洗髪、温罨法、冷罨法、手浴、足浴、入浴介助、口腔ケア、嚥下体操、食事介助、排泄介助、陰部洗浄、移動、移乗、褥瘡ケア、フットケア、抑制帯、与薬の投与、ルート確保、採血、注射、感染予防対策、家族看護、死亡時のケアなど

呼吸

呼吸器の管理、経口挿管の管理、気管切開の管理、気管切開チューブ交換時の介助、痰吸引、体位ドレナージ、無気肺予防の体位変換、酸素投与(カヌラ、マスク類)、Qin1、Qin2の観察・管理(胸腔ドレーン)、胸腔ドレーン挿入介助など

循環

心電図モニターの装着・管理、心電図の観察、CVカテーテルの管理、CVカテーテル挿入の介助、輸液管理、救命救急処置、意識レベルの評価、一時ペースメーカーの管理など

栄養

経鼻胃管カテーテルの管理・栄養投与、胃瘻、腸瘻など

消化器

排便コントロール、ストマ増設した場合はストマ管理、周囲の皮膚トラブルの管理など

腎臓泌尿器

尿道カテーテル挿入、尿道カテーテルの観察・管理、水分in outバランスの確認、浮腫の評価、肺音の評価、透析の場合はシャント部位の観察・管理、導尿、導尿指導など

その他

創部の観察、傷の洗浄・管理指導、創部感染の兆候の説明、血糖コントロール、血糖測定、インシュリン投与、血糖測定インシュリン投与の指導、スパイナルドレナージ、感覚障害や麻痺の評価、膀胱直腸障害であれば尿道カテーテルの管理や排便コントロール、術前術後硬膜外麻酔の管理など

他にも病態によっては他の科に併診する場合もあります。

②かかわり

せん妄患者への看護

 術後、一時的な意識障害が起こる場合があります。興奮状態の場合にはルート類の誤抜去のリスク、それに伴う転倒やベッドからの転落の可能性も考えられます。点滴ルートやチューブが、痛みや不快の要素となり自己抜去してしまう場合が多いです。

 まずは本当に必要なチューブ類なのかを考え、医師と相談する必要があります。食事を摂取することができており、水分確保以外の目的で医師が点滴を使用していない場合には食事からのカロリー摂取へ移行できます。また、尿道カテーテルも抜去してよいか医師へ確認します。創部の痛みはありますが、痛みのコントロールを行い早期離床して早いうちからトイレ動作のリハビリをすることが回復へとつながります。

 他の看護師や医師と相談し、必要最低限の医療機器へ絞った後は、安全に医療機器が使用できるような環境を整える工夫が必要になっていきます。寝衣の中に入れてチューブが見えないようにしたり、場合によってはチューブの長さを調整することもあります。できるだけ昼夜のリズムが取れるよう窓の近くにベッドを配置したり、動線を考えた部屋の配置、気が散らないようにあえて物を少なくしたり、逆に術前に使用していた慣れ親しんだ物を家族に持ってきてもらったり、時計を置いて時間感覚を刺激したりと、患者さんに刺激を与えつつ部屋の環境を整える工夫はたくさんあります。また、できるだけ早くせん妄状態から脱するためにも、薬を使って昼夜のリズムを整えたり、日中の覚醒を促したり、時には家族に協力してもらい面会時に会話をしてもらうだけでも刺激になってとてもよい効果となります。

 治療に必要なチューブ類がすべて抜けたことがきっかけでせん妄状態から脱し、すぐに術前の状態に戻った患者さんもいらっしゃいました。慣れない環境や医療器具がせん妄状態にさせていることがよくわかった事例でした。

認知症患者への看護

 手術前から認知症の方もいたり、長期の入院で認知症が進んでしまう方もいらっしゃいました。「認知症」と「手術」の組み合わせで最も注意しなければならないのが入院による認知機能低下、ADL低下、そして廃用症候群です。

 一例ですが、この経過をたどった方がいました。術前は食事動作やトイレ動作は自力で行えており軽い認知症だった方が、術後の絶対安静と長期の入院により認知症が悪化、自力で身の回りのことが行えなくなりました。術前は明るかった性格がほとんど笑顔を見せない姿になっていました。気分も下がってしまうためこちらから促しても離床する気力がなくベッドに横になる日々。食事もとれないため体重は減り、筋力も減るためさらに離床は困難、栄養状態も悪化、とうとう仙骨部に褥瘡ができてしまいました。その方は廃用症候群となり寝たきりになってしまったのです。どこかのタイミングで防げたところはあったと思います。私はこの経過をたどった患者さんをみて、少しでも認知機能の悪化を防ぎたいと思いました。

 術後の身体の回復のためには身体を休ませなければなりません。ですが日々の刺激が少なくなると認知機能低下へとつながりやすいため、早期から低下を最小限に抑える工夫が必要になっていきます。ここでも早期離床は大切です。できるだけ早く身体を動かすことで回復が早まります。食事動作やトイレ動作も患者さんの本来の能力を活かしながら、その他の必要な部分のみ介助を行っていきます。入院生活上のルール、例えば、「歩行不安定なためトイレ移動時はナースコールを押す」ことについてなかなかできない患者さんがいれば、部屋の中の常に目に入るところに張り紙を貼っておくなど工夫できます。自らナースコールを押すことが難しければ、訪室の頻度を増やし、その都度こちらからトイレの有無を確認し付き添うことも大切になっていきます。他にも上記の、「せん妄患者の看護」でもお伝えしましたが、家族の協力、自宅のものを持ってきてもらうことで精神上の安定を保てたり、術前を思い出したりすることでよい刺激となる場合もあります。医師の許可が下りれば一時的な自宅外泊も効果的かもしれません。

精神的サポート

 緊急手術で突然の入院となり、病気に対しての受け入れがまだ追いついていないという方もいます。受け入れには時間が必要ですが、医師からの病状説明を聞ける場を設置することや患者さんの思いを吐き出す場を作ることが大切になっていきます。

 今どんな治療を受けているのかわからない状態で入院しているのはとても不安なことと思います。医師からの病状説明や治療説明のほかに、その都度補足で分かりやすく簡単に伝えていくことも心がけていました。

 術後の痛みは、体力的にも精神的にもかなり疲弊してしまう部分だと思います。医師からの鎮痛剤や睡眠薬の頓用薬処方がある場合は、活動と睡眠のバランスがとれるよう、使用の時間を患者さんと一緒に相談したり、1日使用量や使用間隔も考慮し一緒に考えていく必要があります。もし私が入院している患者さんの立場だったら、知識を持っている専門の人と一緒に考えたり、提案してもらったら嬉しいなと思うのでできるだけ寄り添えるように心がけていました。

③5つの力

それは、アセスメント力、予測する力、冷静に判断する力、多重業務をこなす力、五感力であると私は考えます。

 

アセスメント力

 解剖、術式、術後の経過、術後合併症の病態についての知識があると、なぜ今の状態になっているのか、これ以上悪化させないためにどのようなケアが必要なのか、について考えることができます。様々な状況の患者さんがいらっしゃるので考える機会が多く、鍛えることができます。また他の看護師との意見交換を行うことでさらに知識が深まっていきます。

予測する力

 アセスメントができていると次の状態を予測することができます。先のことを次々と考え、状態が悪化した際にすぐに対応できるよう物品をそろえておくなど、身の回りや心の準備ができ対応できます。物品をそろえていなくとも頭の中にあるだけでもだいぶ違うと思います。すぐに鍛えられるかと言われれば時間はかかるかもしれませんが、日々のかかわりで成長することができます。

冷静に判断する力

「アセスメント力」「予測する力」があると次に行動を起こす判断を冷静に決めることができます。私は今でも急変時はドキドキしてしまい、まだ成長途中段階だとは思いますができるだけ、判断材料となる「アセスメント力」「予測する力」を鍛えられるよう考えることを心がけていました。

多重業務をこなす力

 どこの病棟でも多重業務はあると思います。循環器病棟も様々な仕事が一度に重なるため優先順位を決めてこなしていく必要があります。「循環器病棟はどんな病棟?」の記事の1日の流れでも紹介した通り、基本の仕事のほかにも、合間にはナースコール対応(排泄ケア、トイレ介助、緊急時など)がありますし、心電図の波形をこまめに観察する、丁寧な患者さんの対応、心のケア、指導、急変時の対応、検査出しなどが一度に重なることがあります。忘れないようにメモも活用しながら頭の中の時間軸に大まかなスケジュールを組み、一つ一つこなしていくように働いていました。

 病棟は広いため、できるだけ少ない動線で動くことも意識していました。物品を忘れてナースステーションまで取りに戻る動作ですら体力も時間も失ってしまうため、動く前に必要なものを準備し、どの順番で回るのか頭の中でスケジュールを立てて移動していました。頭の中で考える癖がついていたと思います。

五感力

 多重業務をこなすためには、五感を研ぎ澄ませて常にアンテナを張ることが大切です。間接視野でものを把握したり、アラーム音を聞き分けたり、バイタルサインでは実際に体に触れて体温は温かいか冷たいか、冷汗をかいているのか、浮腫みはあるのか、など得られる情報はたくさんあります。働いていると自然と身につく力だと思います。

 

まとめ

 少し長くなってしまいましたが、当時働いていたことを思い出して、私が大切にしていたこと、学べたことについて記載していきました。参考書で看護について調べてみると、「看護:血圧管理、精神的ケア」など大まかな内容しか書いていないものが多く、看護は実際に経験するしか情報がないのだと思っていました。なかなか実体験を載せている参考書は少ないと感じていたため、看護の実際について皆さんにシェアできるようなブログにしたいと思い始めてみました。まだ始めたばかりで手探りな状態ですが、今後もよい記事が書けるよう勉強していきます。よろしくお願いします!