最近は寒暖差が激しくて体が追いつきませんよね。みなさん体調お気を付けください!
今回は下剤について、投稿します!
理由としては、
①全身麻酔使用、術中操作、術後の安静、治療のため食事を摂取しないことなどにより腸管の動きが悪くなり、術後イレウスとなる可能性があるためです。
②便秘になった際、排便による血圧変動が起こる可能性があるためです。排便時の怒責による一時的な高血圧によりさらなる瘤拡大や破裂、血管解離が悪化する可能性があります。または、排便後腹腔内圧が一気に下がることで起こる一時的な低血圧により失神を起こし転倒してしまう可能性があります。
術後のこういったリスクを起こさないためにも排便コントロールは非常に重要です。
看護師が積極的に声掛け、介入し予防していきます。
目次
看護師の介入
①早期離床、運動、リハビリ
なんといっても回復を早める、早期の離床がとても大切です。自然の力を使って体を動かすことで腸管も少しずつ目覚めていきます。術後回復、排便コントロールのためにも運動が大切であることを患者さん自身にも理解してもらう必要があります。前向きな気持ちになれるよう、ポジティブフィードバックを行い、精神的サポートも行います。
②食事、水分
食事や水分が取れるようになってきたら、しっかりと摂取し腸管を刺激することで排便のリズムを作ることができます。
③下剤の使用
術後の痛みによって、①や②ができないことがどうしてもあります。そういう時はお薬の力を借りることもとても大切です。
便秘の種類
便秘とは・・・排便回数の減少、排便の困難さ、硬便、不完全な排便の感覚などを呈する症状のことです。一般的に、排便回数が1週間に3回未満と定義されることが多いです。
【機能性便秘】
①食事性便秘
食物繊維の少ない偏った食事が原因で起こる便秘です。
②直腸性(習慣性)便秘
習慣的に便意を抑えたり、下剤や浣腸を乱用することで排便反射が減弱してしまうことで起こる便秘です。介助が必要な高齢者や寝たきりの方がなりやすいと考えられています。
③弛緩性便秘
体質や栄養不足などが原因で大腸の運動や緊張が低下することで便の通過が遅延し、水分が吸収されることで硬便となり、便秘になります。高齢者や寝たきりの方がなりやすいです。
④痙攣性便秘
ストレスや下剤の連用などが原因で、副交感神経の過緊張が起こり、腸管が痙攣性に収縮することで便の移送が妨げられ便秘となります。
【器質性便秘】
腸管の腫瘍や癒着、炎症、潰瘍もしくは、腸管以外の他疾患が原因で通過障害が起こり便が移動できなくなることで起こる便秘です。
ここで、本題の下剤の種類についてです。
医師は患者さんの状況によって、合うお薬を処方していると思うので、その部分を理解しておくとお薬の効果を十分に発揮することができます。
下剤の種類
①機械的下剤
【便の容量を増加させ柔らかくし、排泄しやすくします。】
1.塩類下剤
腸管内に水分を移行させ柔らかくし、その刺激で排泄を促します。大量の水分とともに服用します。習慣性が少ないです。
※体の中にほとんど吸収されないですが、わずかに吸収された分は腎臓で排泄されます。腎機能低下や障害がある患者さんは注意が必要です。
2.膨張性下剤
便を膨張させ、かさを増し排泄を促します。腸蠕動運動を促進させます。習慣性はないです。
※胃でも膨れるので、もたれ感があります。腸に狭窄やポリープ等がある患者さんは、腸閉塞リスクがあるため注意が必要です。
〇カルメロースナトリウム、寒天など
3.糖類下剤
大腸での浸透圧作用により便を柔らかくして排泄を促します。また、腸内での分解により発生した有機酸が腸蠕動を亢進させて排便を促します。マグネシウム等を含んでいないため安全性は高く、高齢者や腎疾患のある方、子どもにも使用されます。
〇D-ソルビトール(X線造影剤使用後の便秘予防に用いられます。)
4.浸潤性下剤
界面活性作用により便の表面張力を低下させ、便の中に水分を浸潤させて柔らかくします。
※作用が弱いので膨張性や刺激性の下剤と一緒に配合されることが多いです。
〇ジオクチルソジウムスルホサクシネート(ビーマス)
②刺激性下剤
【腸の神経を刺激して、腸蠕動を亢進させます。】
1.小腸刺激性下剤
小腸を刺激し腸蠕動を活発にして排便を促します。
〇ヒマシ油
2.大腸刺激性下剤
アントラキノン系誘導体:薬剤が小腸より吸収されて直接大腸粘膜を刺激します。妊婦が使用すると子宮収縮を誘発し、流早産の可能性があります。
〇センナ、アローゼン、センノシド(プルゼニド)、ダイオウなど
ジフェノール誘導体:大腸粘膜を刺激します。習慣性がなく幼小児、高齢者、妊婦に使用しやすいです。
※長期連用すると体が慣れてしまい効きにくくなってしまうことがあります。下剤の量が増えすぎると腸に炎症を起こすことがあります。
〇ピコスルファートNa(ラキソベロン)、ビオフェルミン便秘薬など
3.座薬、浣腸
〇レシカルボン座薬:腸内で炭酸ガスを発生し蠕動運動を亢進することにより排便を促進します。
〇テレミンソフト座薬:結腸・直腸の粘膜に作用し蠕動運動を促進します。
〇グリセリン浣腸:直接、肛門・直腸の粘膜を刺激して排便を促します。
③その他
1.腸液分泌増加
腸管内への腸液の分泌を増加させ便を柔らかくし排便を促します。
〇アミティーザ
2.漢方
血流をよくして腹部を温めることで、胃腸の働きを整え張りや腹痛を改善します。
〇大建中湯など
【看護】
下剤の種類によって効果時間が異なります。小腸で作用するのか、座薬や浣腸のように直腸で作用するのか異なるためです。前者は7~8時間程度、後者は30分~長くても3時間程度です。また、便性状も変わっていきます。腸管で水分を移行させるタイプの下剤は、緩い便もしくは下痢となることが多いです。逆に座薬や浣腸は硬便であることが多いです。トイレ動作に介助が必要な方、時間を要する方の場合、トイレに間に合わなくて汚してしまうことを気にされる患者さんもいらっしゃいました。その場合は、内服する頻度を減らしたり(医師からの頓用自己調節可能との指示がある場合)、トイレ移動に確保できる時間帯に薬の効果が発揮できるよう(例えば、夜中に効くのではなく日中に効くようにしてました。)逆算して薬を内服したりしていました。
患者さんの排便状態をアセスメントするためには、術前の排便状況を把握した上でアセスメントすることが大切です。元々毎日排便がある人なのか、2、3日に1回なのか1週間に1回なのか、術前から下剤を使わないと便が出ないのか...などです。
なぜ便秘が起きているのか、便秘の種類はどれに当てはまるのか、術後が影響しているのかなど原因を考え、まずは食事や運動から取り入れてみます。それでも改善せず、患者さんの苦痛が伴う場合には医師に相談して下剤の使用を検討し、使用することも大切なことです。
また、術後イレウスを予防するために下剤を使用する場合もあります。例えば腹部大動脈人工血管置換術をした場合など、術後はイレウスになる可能性が高い手術には腸蠕動をよくする目的で排便の有無にかかわらず、数日続けて座薬や下剤を使用することがあります。(医師の方針にもよります)
まとめ
どのような目的で下剤を使用するのか、どの薬を使用するのかを理解していると患者さんに説明ができますし、患者さんの協力も得られます。自分の身体を自己管理するという目的としても、自ら行動できるように看護師が知識を共有することもとても大切になっていきます。